こんにちは。SPL国際エンドーサーの古屋です。
ここ最近SPLの名前が、様々な機関のご協力もありまして一気に国内での知名度も上昇してまいりました。それと共に、SPL Japanへのお問い合わせを頂戴することも増えてまいりまして、特にそのサウンドというものに対してのご質問を頂戴することが多々あります。
そのサウンドの方向性という事について、今回のブログでは実際に楽曲を仕上げた例を挙げ、ご説明してみたいと思います。
国際エンドーサーという立場ではありますが、元々はSPLの一ファンとしてマスタリングやレコーディングなどの機材を用いてきましたので、その音というものについては熟知しているつもりです。楽曲を積極的に制作するという立場から聴いた場合と、ヘッドフォンアンプやDACを用いた折の方向性についても、凡そはその方向感というものはSPLというメーカーの哲学に根差していますので、一貫した考え方というものを感じることができます。
私がマスタリングエンジニアとして参加した一作品を、ご紹介してみたいと思います。チェコで2018年に最優秀楽曲賞を受賞した楽曲になりますが、この折にはSPLのマスタリング機材は勿論、Phonitorシリーズをヘッドフォンアンプとして用い、スピーカーと双方に聴き比べながら最終仕上げを行いました。
この楽曲内で大きな役割を果たすピアノの存在は、マスタリング時には物凄く気を遣う要素の一つです。勿論女性ボーカルの美しさを全面的に出す必要があるのですが、それと共にピアノの立ち位置というものを”伴奏”という以上に、ボーカルの良きパートナーとしての地位を与える必要があり、それなりの野太い音色というものが必要であると感じていました。また広大さ・壮大さというSPLが如何にも得意とするような要素も、ストリングスオーケストラが用いられていることから、大いに強調する必要性があり、考え方としてはフルオーケストラのオペラを扱うような考え方と、更にはドラムやベースなど現代的な楽器も含まれていることから、楽曲のスケールとしては最大の編成と考えなければなりません。
こういう大曲を演出をする上で、最も犯してはいけない機材チョイスの考え方として『High Gain(ハイ・ゲイン)』が挙げられます。これは昨今多くのメーカーが、自らの機材の優秀さを演出する意味で、高音を強調する方向性に在ります。これを積極的に取り入れられてしまうと、マスタリングをする側としては非常に厄介で、自らで調整したいのに、機材そのものがサウンドを持ちすぎてしまっていることで、微調整が利かないといった問題が浮上します。若しくは、機材を通すだけで既に高音部の輝きが加えられるとも捉えられるのですが、必ずしもその輝きが必要という事もなく、あくまでその采配はエンジニア側で微調整するものであると私は考えています。その上その強調されている部分が美しければ良いのですが、時によっては安っぽく感じてしまう事もあり、この辺りはあまり主張というものを本来はしないことに越したことはないと考えています。むしろ機材本来の能力そのもので勝負することで、楽曲の色合いや質感というものを作り込む方が本来ある姿ではないかと思っています。
そういう意味からしますと、SPLの場合はそもそものダイナミックレンジが140dBを超えてくるという、通常では考えられないほどの広大さを持ち合わせており、加えてそのゆとりから生み出される壮大な広がりを120vテクノロジーがもたらすため、High Gainの必要性は全くありません。マスタリング機材もPhonitorシリーズも、またDirector Mk2に至っても、マスタリングエンジニアという視点から聴いた場合において、変な強調はせずに真っ向勝負でサウンドの作り込みを行っているという印象です。これがまず、SPLの音の方向性という事で、捉えて頂ければと思います。可能性を最大限に広げてある分、ヘッドフォンやスピーカーの最高性能を試すこともでき、多くの新しい発見があるという機材でもあります。
加えて裏事情としてVGPの審査の折、オーディオ評論家の岩井先生から驚きの声として『昨今の機材としては、考えられないほどにクリアで変な強調のない機材』というご意見を頂戴しました。
SPLの機材からはナチュラルで広大、そして深い味わいを楽曲から感じることができるはずです。皆さんが日ごろお聴きになられている楽曲が、SPLを通すことで全く異なる景色を彩るかもしれません。
そして何よりも、偉大な作曲家であるシューマンが最終的に落ち着いた地であり、そして詩人のハイネが愛したデュッセルドルフという最高に美しい地からすぐの場所にファクトリーがあり、歴史ある深い芸術性を育んだ知性溢れるサウンドであるという説明が、最もふさわしいのではないかと思います。
デュッセルドルフの中心地、ケーニッヒスアリー。ナポレオンが作ったと言われている。
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