国際エンドーサーの古屋です。
リスニングルームの構築を行った後に、様々な試みを行っています。多くの斬新なテストも行いまして、凡その方向性というものも見えてきました。
特に面白いのが、スピーカー右下に見えますレッドのイコライザーでして、これはDirector MK2にインサートポイントがある故に、マスタリングで使用している最高性能のイコライザーを用いることで、自在にスピーカーのサウンドをコントロールするというものです。
そしてこのイコライザーを用いたセッティングというものは、所謂「補正」という程度のものではなく、積極性をもってして「音作り」が行えるほどの許容範囲を持ち合わせていることも確認しました。そして設置されている、SPLの公式スピーカーであるSKY AUIDOは、僕自身が世界中で聴いてきたサウンドシステムの中で、ダントツに素晴らしい逸品であると断言できます。
例えるならば、Abbey Roadで聴いたどのスピーカーよりも、また世界を股にかけるマスタリングスタジオのどのスピーカーよりも、そして僕が今まで使ってきた高額なDSPスピーカーよりも、はるかに音楽的で立体感溢れ、そして多くの音楽表現において緻密な描写を可能とするシステムであると感じました。これは本当に素晴らしいです。
(写真のリスニングルームのコンフィギュレーションは、SPL Director Mk2 + SPL PQ, SPL Performer s800, そしてSKY AUDIOです)
どんな世界のスーパーメジャーの音源でも、意外と多くの場所で音楽プロダクション上のミスを見つけることがありますし、自分自身も課題があることがわかりながらも、ミキシング上他に手立てがなく、「何とか一定のポイントに入れ込む」ということがあります。
広大な音像とステレオイメージを自在に表現してくるSKY AUIDOの場合、このちょっとした「ミスや無理」というものを、手に取るように表現してくれます。
そしてDSPの決定的とも言える弱点である、「平面的なサウンド」とは対照的に、物凄いリアリティ溢れる立体的な音像を創り上げてきます。これはDACであるDirector MK2に最高性能のイコライザーを挿すことで、部屋鳴りにおける補正ができると共に、自らが求める理想のサウンドを積極的に創ることで、音場環境というものを自在にコントロールすることにより、想像以上に美しく楽曲の特質を理解できるサウンドを生み出すことが可能になります。そもそもスピーカー、DAC、ケーブルと、渡されたものを繋ぐだけで鳴らすというのは、少し乱暴な気もします。自らでマスタリングを行う身が故に感じることでもあるのかもしれませんが、システムに対して積極的にリスナー側の意見や一連のコンフィギュレーションの課題克服、或いは部屋鳴りの課題を瞬時に修正し反映することができる、そんな次世代型の考え方がこれからのオーディオにあっても良いのではないかと考えています。
昨今安価に調整できることからも、DSPを内蔵する機種が増えていますが、実際自分がこれまでに感じてきた違和感というものは、やはりデジタルの中で均一化されたサウンド作りであることも理解できました。
少し専門的になりますが、音楽制作の中で、ミキシング・マスタリングにおいては、なるべくPC上での作業を避けることで、より深みがありパンチーなサウンドを作れるという考え方があります。これは一般的にプラグインと呼ばれる仮想エフェクターの部類を用いることを指しますが、どうしても実際的な回路を持たずしてエフェクトを楽曲に掛けることで、音質は痩せ細り、腺病質で表面的なサウンドになってしまうという傾向を持っています。
プラグインにおけるサウンドコントロールとDSPにおけるサウンドコントロールは、デジタル上の特質から似ていると感じられ、スピーカーもデジタルでコントロールされることで、どうしても平面的なサウンドになると共に、表現が一元的になりやすいという特質を以前から感じていました。それが故に、普段楽曲を聴いた折には欠点に気付き難く、音楽制作では
ミスをミスとして理解できないという事もありました。
今回は全てSPL社の純正・公式機材を用いることで、デジタル処理を一切排し、純粋なオーディオ回路から産み出されるサウンドは、立体感に溢れ正に芸術的な美しさと表現力に満ちていると感じることができました。
尚今回のイコライザーにおけるスピーカーチューニングは、今後SPL Japanで一つのサービスとして展開する案もあり、更にオーディオファンやプロオーディオフリークに向けて充実した展開をはかっていくつもりです。
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